執筆:きずく Renovation(神奈川県横浜市都筑区/中古住宅のリノベーション)
家を買ったあと、修繕やリフォームにいくら必要になるのか。
考えたことはあっても、具体的な金額まで把握している方は多くありません。
ある試算では、木造戸建ての30年間の修繕費は約1,193万円とされています。
決して小さくない金額ですが、これは「ある日いきなり請求される」ものではありません。
工事の時期はある程度決まっていて、早めに知っておけば分散できる費用です。
この記事では、戸建てのメンテナンス費用が30年でいくらかかるのか、築年数ごとにどんな工事が必要になるのかを整理します。
そのうえで、教育費と重なりやすい30〜50代の方が、家計を守りながら住まいの価値を保つ考え方をお伝えします。
戸建てのメンテナンス費用は30年でいくらかかる?
戸建てのメンテナンス費用は、30年間で1,200万円前後を見込んでおくのが現実的です。
新築時にはほとんど意識されませんが、家は年数とともに傷んでいきます。
屋根や外壁は雨風にさらされ、給湯器や水回りの設備には寿命があります。
つまり「もし壊れたら」ではなく「いつ交換するか」という前提で考える費用なのです。
30年間の総額は約1,193万円というデータ
まず全体像をつかみましょう。
さくら事務所が2026年に公表した試算では、延床面積約115.5平方メートルの木造戸建てで、30年間の修繕費は約1,193万円とされています(出典:SUUMOジャーナル 2026年2月20日)。
この金額が大きく感じられるのは、ふだん意識しないところにも費用がかかるからです。
外壁や屋根はもちろん、給湯器、水回り、シロアリ対策、防水など、対象は住まい全体に及びます。
しかも同じ試算では、5年前の約876万円と比べておよそ1.4倍に増えているとされています。
資材や人件費の上昇が背景にあり、「先延ばしすれば安くなる」わけではないという点は押さえておきたいところです。
戸建ての修繕費は月いくら積み立てればいい?
ひとつの目安は月3万円前後です。
さくら事務所の試算(SUUMOジャーナル 2026年2月20日)では年平均およそ40万円とされており、月々に均すと約3.3万円になります。
一度に払う金額ではなく、長い時間をかけて分散される費用だと分かると、受け止め方も変わってきます。
たとえば築10年で外壁の塗装に100万円かかったとしても、それは前の10年ぶんの積み立てを使う、という発想です。
住宅ローンの返済に加えて月3.3万円を確保するのは簡単ではありません。
それでも「いくら必要になるか分からない」状態より、金額が見えているほうがはるかに対策を立てやすくなります。
マンションの修繕積立金と比べてどうか
結論から言えば、戸建てにもマンションと同じ発想の積み立てが必要です。
マンションには毎月自動的に引き落とされる修繕積立金があり、大規模修繕はそこから支払われます。
一方で戸建てにはその仕組みがないため、「積み立てていない=費用がかからない」と誤解されがちです。
実際には支払いのタイミングが違うだけで、必要な総額はどちらも小さくありません。
戸建ての強みは、工事の時期と内容を自分で決められることにあります。
裏を返せば、判断を先送りするほど傷みが進み、結果的に高くつくおそれもあるということです。
築年数別|いつ・何の工事が必要になる?
メンテナンス費用は、築10年・20年・30年という区切りでまとまって発生する傾向があります。
建材や設備には、それぞれおおよその交換周期があるためです。
この波を知っておけば、「そろそろあの工事が来る」と前もって身構えられます。
逆に知らないままだと、家計の準備がないタイミングで大きな支出が重なってしまいます。
全体像は次のとおりです。
- 築10年前後:屋根・外壁の点検、給湯器の交換
- 築20年前後:水回り4点(キッチン・浴室・トイレ・洗面)の更新、外装の塗装。水回り4点をまとめて行う場合は100万円台から400万円程度と幅が大きい
- 築30年前後:屋根の葺き替え(屋根材をすべて新しくすること。スレート瓦で35年までに140〜180万円程度)、大規模リフォームか住み替えかの検討
築10年前後|外壁・屋根の点検と給湯器はいつ見る?
築10年前後は、初めてまとまった費用が発生しやすい時期です。
外壁や屋根の点検、給湯器の交換などが候補に挙がってきます。
さくら事務所の試算(SUUMOジャーナル 2026年2月20日)では、屋根用化粧スレート葺きの場合、4〜6年ごとの点検が目安とされています。
つまり築10年の時点では、外装は大きな工事よりもまず状態を確かめることが中心で、給湯器などの設備交換が先に来ることが多くなります。
この時期に点検を受けておく価値は非常に大きいと言えます。
なぜなら、塗装で済む段階と、下地まで傷んでしまった段階とでは、費用が2倍以上に開くこともあるからです。
下地とは、屋根材や外壁材の内側にある土台部分のことです。
まだ大丈夫だろうと感じる時期にこそ、専門家の目を入れておきたいところです。
築20年前後|水回りをまとめて交換するといくら?
築20年前後で負担が重くなりやすいのは、キッチン・浴室・トイレ・洗面といった水回りが同時期に更新時期を迎えるためです。
これらは同じタイミングで設置されているので、寿命も揃ってやってきます。
水回り4点をまとめて行う場合、選ぶ設備や工事範囲によって100万円台から400万円程度までと、金額の幅が大きくなります。
配管の状態によっても変わるため、実際の金額は現地を見てもらわないと分かりません。
外装も2回目の塗装時期にあたります。
さくら事務所の試算(SUUMOジャーナル 2026年2月20日)によれば、スレート瓦は20年までに表面塗装が目安で、費用は60〜80万円程度とされています。
この時期は、子どもの進学と重なりやすいという点にも注意が必要です。
だからこそ「20年目に水回りが来る」と早い段階で分かっていることが、家計を守る力になります。
築30年前後|大規模リフォームと住み替え、どちらを選ぶ?
築30年前後は、これから先の20年をどう住むかを考える節目になります。
外装も設備も一巡し、間取りや断熱性能が今の暮らしに合わなくなってくる時期だからです。
屋根そのものを更新する時期も近づきます。
さくら事務所の試算(SUUMOジャーナル 2026年2月20日)では、スレート瓦は35年までに葺き替えが目安で、費用は140〜180万円程度とされています。
子どもが独立して部屋が余っていたり、逆に親との同居を検討していたりと、家族のかたちが変わっているケースも少なくありません。
このタイミングで、大きく手を入れて住み続けるのか、住み替えるのかを比べる方は多いものです。
判断材料になるのは、建物の傷み具合、これからの家族構成、そしてそこに住み続けたいかどうかという気持ちです。
金額だけで決められる問題ではないからこそ、余裕をもって考え始めておきましょう。
「安く直す」より総額が下がる3つの考え方
長い目で見ると、1回あたりの工事費を削ることより、工事の回数と傷みの進行を抑えるほうが総額は下がりやすくなります。
同じ100万円でも、10年でやり直しになる工事と、20年もつ工事では意味がまったく違うからです。
30年という時間で家計を考えるなら、比べるべきは目の前の見積もり金額だけではありません。
ここでは、生涯コストを下げる3つの視点を整理します。
先延ばしすると総額が増える工事はどれ?
雨漏りや水漏れに関わる工事は、先延ばしがそのまま金額に跳ね返ります。
水が建物の内部に入ると、目に見えない下地や構造材まで傷めてしまうためです。
たとえば屋根の塗装で済んだはずの状態を放置すると、葺き替えが必要になることがあります。
さくら事務所の試算(SUUMOジャーナル 2026年2月20日)でも、この差は数字に表れています。
スレート瓦の表面塗装が60〜80万円程度なのに対し、葺き替えは140〜180万円程度とされています。
一方で、内装のように「見た目が古い」だけの部分は、急いで直さなくても建物の傷みは進みません。
急ぐべき工事と、待てる工事を分けて考えることが、総額を抑える近道になります。
交換周期の長い建材を選ぶと生涯コストが下がる
建材や設備を選ぶときは、価格だけでなく「次にいつ手を入れるか」まで含めて比べましょう。
初期費用が安くても交換周期が短ければ、30年のあいだに何度も費用が発生するからです。
分かりやすいのが外壁の塗料で、耐用年数の短いものと長いものでは、30年間に必要な塗り替えの回数が変わってきます。
仮に10年ごとに塗り替える場合と15年ごとで済む場合では、30年で1回分の差が生まれる計算です。
床材や設備も同じ考え方で選べます。
「30年でいくらか」で比べる習慣を持つと、少し高い選択肢が実は安かった、ということは珍しくありません。
断熱リフォームは光熱費でどのくらい埋め合わせられる?
断熱に関わる工事は、工事費の一部を光熱費の削減で埋め合わせられる可能性があるという特徴があります。
窓や壁から出入りする熱を抑えられれば、冷暖房にかかるエネルギーが減るためです。
とくに開口部である窓は、熱の出入りが大きい場所です。
内窓(いまある窓の内側にもう1枚窓を足す工事)は壁を壊さずに施工できるため、比較的取り組みやすい工事です。
削減できる金額は住まいの状態や地域、暮らし方によって差があるため、一律にいくらとは言えません。
それでも、暑さ寒さがやわらぐことで日々の暮らしやすさが変わる点は、金額以上の価値になり得ます。
工事を検討するときは、このあと紹介する補助制度もあわせて確認しておきましょう。
教育費と重なる時期をどう乗り切るか
30〜50代のご家庭では、住まいの修繕費と教育費のピークが重なりやすいという難しさがあります。
子どもの進学と、家の設備が寿命を迎える時期が、たまたま近づいてしまうためです。
どちらも待ってくれない支出だからこそ、順番と手段を工夫する必要があります。
ここでは、負担を平らにならすための考え方を見ていきましょう。
30〜50代は住宅と教育費のピークが重なる
まず、重なることを前提に計画を立てておきましょう。
築20年前後は水回りの更新期にあたり、その頃に子どもが高校・大学へ進む家庭は少なくありません。
住宅ローンの返済も続いているため、三重の負担になりやすい時期です。
このとき「両方まとめて何とかする」と考えると、どうしても無理が出ます。
現実的なのは、先に急ぐ工事だけを行い、残りを数年ずらすという分け方です。
家全体を一度に新しくしなければならない、という思い込みを外すことが第一歩になります。
補助金で負担を下げる(2026年8月時点)
省エネにつながるリフォームには、国の補助制度が用意されている場合があります。
住宅の省エネ化を進める政策的な後押しがあるためです。
2026年8月時点では、国土交通省などによる「みらいエコ住宅2026事業」が実施されています(国土交通省の案内ページ/事業の公式サイト)。
窓やドアの断熱改修(開口部)と、壁・屋根・床の断熱改修(躯体)が対象に含まれます。
このほか、高効率給湯器などのエコ住宅設備の設置、子育て対応改修、バリアフリー改修なども対象になります。
補助額は、工事の種類ごとに決められた金額を合計する仕組みです。
1戸あたりの上限は、住宅が建てられた時期と、達成する省エネ基準によって40万〜100万円の範囲で変わります。
なお申請は、この事業に登録した施工会社(みらいエコ住宅事業者)が発注者に代わって行う決まりです。
施主ご本人が直接申請することはできないため、工事を頼む会社が登録事業者かどうかを事前に確認してください。
また、要件を満たす工事であることが前提で、誰でも必ず受けられるものではありません。
この事業では、住宅を一定の省エネ基準に適合させるための工事の組み合わせ(要件化工事)が求められます。
内窓の設置だけで必ず補助を受けられるわけではないため、ご自宅の工事が対象になるかどうかは施工会社に確認してください。
この事業は予算の上限に達した時点で受付が終了します。
交付申請の受付は遅くとも2026年12月31日まで、予約の受付は2026年11月30日までとされています。
検討する際は、必ず公式サイトで最新の条件と受付状況を確認してください。
工事をまとめる/分けるの判断基準
工事をまとめるか分けるかは、足場と生活への影響を基準に考えると判断しやすくなります。
外壁と屋根のように同じ足場を使う工事は、まとめたほうが仮設費用(足場を組むための費用)のむだが減るためです。
反対に、キッチンと浴室のように生活への影響が大きい工事を同時に行うと、暮らしの負担が一気に増えます。
小さなお子さんがいるご家庭では、工事中の生活をどう回すかが金額と同じくらい大事な論点になります。
まとめるほど1回あたりの負担は増え、分けるほど総額はやや増えるという関係です。
家計の余力と、家族が耐えられる不便さの両方から決めるのが現実的でしょう。
我が家の30年計画を作る3ステップ
ここまでの内容を、ご自宅にあてはめてみましょう。
必要なのは、正確な金額をはじき出すことではなく、大きな流れをつかんでおくことです。
紙一枚に書き出すだけでも、次にやるべきことがはっきりします。
3つのステップで進めていきます。
ステップ1:いまの築年数から「次の工事」を洗い出す
はじめに、ご自宅の築年数を起点に、次に来る工事を書き出してみてください。
工事の時期は建材や設備の寿命でおおよそ決まるため、築年数が分かれば見当がつくからです。
築8年なら、外壁と屋根の点検、そして給湯器の様子見です。
築18年なら、水回りの更新と、外装の2回目の塗装が視野に入ります。
このように「次の5年で何が来るか」だけでも把握できていれば十分です。
すべてを完璧に予測する必要はありません。
ステップ2:優先順位をつける(雨・水・安全が先)
書き出したら、雨・水・安全に関わるものを先に置きましょう。
これらは放置すると建物そのものを傷め、家族の安全にも関わるためです。
具体的には、屋根や外壁からの雨漏り、給排水の水漏れ、そして段差や手すりといった安全面が先になります。
見た目の古さや使い勝手の不満は、そのあとで構いません。
順番を決めておくと、予算が限られたときに迷わなくなります。
限られたお金をどこから使うかがはっきりしていることは、想像以上に大きな安心につながるものです。
ステップ3:見積もりは「今の価格」だけで比べない
見積もりを取るときは、金額と一緒に「何年もつ想定か」を必ず確認しましょう。
同じ工事名でも、使う材料や施工方法によって次の更新時期が変わるからです。
たとえば外壁塗装なら、使用する塗料の種類と想定耐用年数を聞いておきます。
そのうえで「工事費 ÷ もつ年数」で比べると、1年あたりの負担が見えてきます。
安いほうが1年あたりでは高い、ということも起こり得ます。
長く住むほど、この見方が効いてきます。
まとめ
戸建てのメンテナンス費用は、30年で1,200万円前後を見込んでおくのが現実的です。
さくら事務所の試算(SUUMOジャーナル 2026年2月20日)では約1,193万円、月に直すと約3.3万円という水準が示されています。
大きな金額ですが、工事の時期はおおよそ決まっているため、早く知るほど分散できます。
築10年で外装の点検、築20年で水回り、築30年で今後の住まい方の見直し。
この流れを頭に入れておくだけでも、家計の準備はずいぶん違ってきます。
そして総額を下げる鍵は、1回の工事を安くすることではなく、傷みを進ませないことと、長くもつ選択をすることにあります。
雨・水・安全を先に、見た目はあとに考えましょう。
見積もりは金額だけでなく、何年もつかとセットで比べてください。
教育費と重なる時期は、急ぐ工事だけを行って残りをずらすのが現実的です。
省エネ改修では補助制度を使える場合もありますが、要件と受付状況は必ず公式サイトで確認してください。
まずはご自宅の築年数を書き出して、次の5年に来る工事を確かめてみましょう。
気になる箇所があれば、傷みが進む前に点検を受けておくと安心です。
よくある質問
積み立てが間に合っていない場合はどうすればよいですか?
急ぐ工事から順に対応し、残りを数年ずらすのが現実的です。
雨漏りや水漏れに関わる工事を先に行い、見た目に関わる工事はあとに回します。
すべてを一度に行う必要はないため、まずは点検で「いま急ぐものはどれか」を切り分けてもらいましょう。
点検はどのくらいの頻度で受ければよいですか?
スレート屋根の場合、4〜6年ごとの点検が目安とされています(出典:SUUMOジャーナル 2026年2月20日)。
外装は不具合が表に出にくく、気づいたときには下地まで傷んでいることがあるためです。
屋根材の種類によって点検の周期は変わります。
台風や地震のあとは、年数にかかわらず確認しておくと安心です。
外壁塗装は何年ごとに必要ですか?
使う塗料の種類によって差が大きく、一律には決まりません。
耐用年数の短い塗料と長い塗料では、次の塗り替えまでの期間が変わるためです。
ご自宅にどの塗料が使われているかは、新築時やリフォーム時の資料、または施工会社に確認できます。
次の塗り替え時期を把握しておくと、30年計画が立てやすくなります。
火災保険で修繕費はまかなえますか?
台風や大雪などの自然災害による損傷は、補償の対象になる場合があります。
一方で、経年劣化による傷みは対象外とされるのが一般的です。
補償の範囲は契約内容によって異なるため、加入している保険会社に確認してください(参考:日本損害保険協会)。
リフォームと住み替えは、どちらが得ですか?
金額だけで一概には決められません。
建物の傷み具合、これからの家族構成、その場所に住み続けたい気持ちの3つで判断が変わるためです。
築30年前後は比較を始めるのに適した時期ですので、どちらの費用も概算で出したうえで並べて比べることをおすすめします。
きずく Renovationについて
この記事は、神奈川県横浜市都筑区を拠点とするきずく Renovationがお届けしています。
きずく Renovationが手がけているのは、中古戸建て・中古マンションのリノベーションと、新築マンションのオプションです。
古き良きものに宿る本質的な美しさを見つめ直し、現代の暮らしに最適化させるリノベーションをご提案しています。
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- ヒアリング:ご希望と暮らし方をうかがいます
- 現地確認:建物の状態を実際に見て確かめます
- 設計・見積もり:プランと概算のお見積もりをご提示します
- 施工・引渡し:現場の品質を確認しながら、暮らしが始まるまで伴走します
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概算のお見積もりのご相談も可能です。
ご連絡は、きずく RenovationのサイトからLINEまたはお問い合わせフォームでお気軽にどうぞ。
※本記事の金額はいずれも目安であり、実際の費用は住まいの状態や仕様、地域によって異なります。制度の内容は2026年8月時点の情報です。本記事は2026年8月20日に公開・更新しました。